リオ・パラから見るスポーツコンテンツの価値最大化の術とメディアの影響力

講座レポート

  • 対象講座
    影響力∞!メディアはいかにして「スポーツ」を届けるか
  • 日時
    2016年11月9日(水)19:30~21:30
  • 会場

    TKP新宿ビジネスセンター 11Fスカイ会議室

    東京都新宿区西新宿2-3-1 モノリスビル11F

  • 講師/ゲスト
    江橋よしのり詳細
  • 講師/ゲスト
    高樹ミナ詳細
  • ナビゲーター
    仲島 修平詳細

本日はリオ五輪終了直後のMARS CAMP13期第4回目の講義。

そんな世間のスポーツへの関心が高まる中、スポーツコンテンツをメディアの立場で発信する2人のゲストにお越し頂きました。

本日のゲストは女子サッカーや障害者スポーツに関する取材をメインに行う執筆家の江橋よしのり氏、そして元アナウンサーで現在スポーツライターとして活動する高樹ミナ氏のお2人です!

高樹氏はリオから日本へ帰国直後のご登壇!江橋氏は、近年注目のブラインドサッカー、アンプティサッカーなどの障害者スポーツを中心に取材をされており、まさにリオ五輪直後の講義に相応しいホットなゲストのお2人に、リオ・パラから見るスポーツコンテンツの価値最大化の術、そしてスポーツコンテンツを発信するメディアの影響力を中心に迫っていきたいと思います。

まずは、ライターとしての仕事の概要、そしてメディアと社会、そのコンテンツの届け方について。

そもそもスポーツライターは、スポーツ選手や競技団体への取材を中心に行い、記事の原稿料を収益とする仕事。その記事をTVや新聞・出版・WEB、または近年では企業が独自で運営するオウンドメディアなどの媒体で発信していくことが社会への届け方となります。まさにスポーツにおけるメディアの役割は、記事がスポーツと社会をつなぐ架け橋であるといえます。

そんなライターおよびメディアのビジネスモデルをインプットしたうえで、ライターの立場でスポーツコンテンツを発信するお2人の仕事のリアルに迫ります。

高樹氏には、リオ・パラの現場から、柔道、車いすテニス、トライアスロン、陸上など実際の競技に関するものから、大会会場、大会ボランティアの活動内容、グルメなど、実際に取材したからこそわかるリオ・パラのリアルについてお話しいただきました。

そして、現場の空気を肌で感じた高樹氏から、「総じてリオ大会は<成功した>と言えるのではないでしょうか。というのも実際に問題視されていた治安の悪さは、セキュリティーの強化もあり大きなトラブルは起きなかったし、現地のブラジル人の熱狂的な応援で、あたたかい雰囲気の大会になっていたと思います。」と総括して頂きました。

また、現地で実際に撮影した写真やエピソードを元に、世界規模の大会を運営していく上で絶対に必要な存在ともいえるスポーツボランティアの存在や、オリンピックパークの裏側まで…受講者特典としてここでの掲載は控えますが(笑)、現地で調達された品々もお持ち頂き、現地の雰囲気とリアルをそのままお伝え頂きました。

また、高樹氏からご紹介いただいたロンドンパラリンピック、リオパラリンピック、東京パラリンピックのコンセプトムービーをみて、3大会の違いを考えることに。

江橋氏はこのムービーに関しての重要なポイントについて、補足として「大会ごとに訴求したいテーマを考えること」が重要であるといいます。記事を執筆にする際にも同じことが言えますが、スポーツを通じて社会に伝えたいものを考え、伝えたいことを軸にしたコンテンツを企画することが重要であるといいます。受講生にとっては、社会への影響力が大きいメディアの役割を再確認するきっかけとなったと思います。

江橋氏は続けて、ご自身が執筆された本をもとに、スポーツコンテンツの価値最大化の術についてお話しいただきました。
スポーツは社会課題の解決策になりうる点から、江橋氏はスポーツコンテンツを通して社会に価値を提供することを意識され執筆をしているとお話しいただき、また障害者スポーツを例に価値提供の難しさについて説明していただきました。

「障害者スポーツ選手つまりパラアスリートである当人たちは、一人ひとり自分の持つ障害に対する考え方が異なることや、記事にできる内容の線引きも異なります。実際に取材をし、選手本人の話から社会の方々に届けたいメッセージをコンテンツに落とし込むことが必要です。」と江橋氏は言います。

そして、発信の役割を担うチャネルにおいて、「届けたいターゲットやコンテンツのメッセージ性によってチャネルが変えることが必要です。」と江橋氏は言い、現代において、セグメントされたターゲットに対しコアに伝えたいようなものであれば専門誌、より分かりやすく多くの人に対し伝えたいのであればWEBやTVなどと、発信チャネルを選択していくことが求められているようです。

本来届けたいと考えるメッセージは、社会の中で情報を欲しい人が求める情報とは必ずしも一致しないこともあるので、発信するメディア側が情報を受け取る社会側のニーズを汲み取る力が重要であるといえます。

そして、「初めに情報に触れたのはテレビであったけど、そのことに興味を持った人が専門誌を読むなど、メディア間でのつながりもあるので、価値最大化のための情報発信の工夫も必要であるといえます。」と、記事を読む人の行動まで意識し情報発信に工夫をすることで価値を最大化していくことができると江橋氏はご説明くださいました。

また、江橋氏の「『信じるな』『疑うな』『確かめろ』」というライターとしての姿勢についてや、なでしこジャパンの監督である佐々木監督が、女性のマネジメントについて執筆し話題となった書籍誕生までの過程の話には、スポーツと社会を結ぶメディアの仕事の位置付けを、まさに体感できるお話も頂きました。

そんな江橋氏と高樹氏の今後のリアルとして、障害者スポーツを取り巻くキーパーソンに江橋氏には「アスリート」、高樹氏には「江橋氏のような人」と挙げていただきました。

江橋氏は「アスリート本人に話を聞き、その話からニーズに気づくとビジネスが広がると感じます。自分たちの価値観だけで企画を決めるのではなく、当事者たちに話を聞くことが大切だと思います。」

高樹氏は「アスリートとパラスポーツビジネスをやりたい人を繋げられる人たちが必要であると考えます。アスリートとビジネスで何をしたらよいのかわからない人たちのパイプ役がキーパーソンだと思います。」と、業界でご活躍のお2人が感じるリアルな内容になりました。

この日の講義の受講生からは、

◎リオパラリンピックに対する情報は、あまり得られていなかったので非常に為になりました。また障害に関する考え方、向き合い方という人生においても大事なものを学びました
◎江橋さん、高樹さん、それぞれの言葉の重みが伝わってきました。まさにメディアとしてスポーツの最前線で活躍している方々のお話は、自分の進路にも生かしたいと思います
◎情報を伝える側のお考えと、その情報を受け取る側としての姿勢、どちらも学び深いものでした
◎当たり前ですが、現場の生の声を聴くことの重要性を感じました。取材対象者と真摯に向き合い「届ける」。メディアの影響力をまじまじと体感しました
◎ライターの仕事に対して理解を深めることはもちろん、仕事に対する取り組み方、考え方、信条について学ぶことが出来、どんな仕事をするにしても大切にしたいと思った。

などなど、普段は媒体を通して受け取るお二人からのメッセージは、リアルイベントでも圧倒的な影響力をもたらしていました!

リオ直後の講義となりましたMARS CAMP13期第4回目の講義も気づけば2時間あっという間に終了!

最後に業界の最前線でご活躍されているお二人から受講生にラストメッセージを頂戴しました。

江橋氏は
「あらゆる状況で『自分で決めていいんだよ』と、アスリート本人の決断や覚悟を尊重する業界であってほしい。『危ないからやっちゃダメ』と周りが制限するのでなく、本人の『それでもやりたい』という決意を受け止めてあげられるスポーツ業界になっていくといいと思います。受講生の方々も周りの人が自分で決めた選択を尊重してあげられるようになってほしいです。」と、障害者スポーツの取材をしてきた江橋氏ならではのメッセージとなりました。

そして、高樹氏は
「愛される人になってほしいと思います。長くやっていけているアスリートも愛されている人が多いと感じています。好かれるという意味ではなく愛される人になってほしいと思います。」と、フリーのスポーツライターとして長年ご活躍されている高樹氏ならではのメッセージとなりました。

ゲストのお2人には、まさにこれまでの経験から感じたことをラストメッセージとして頂戴しました。

スポーツ×社会。スポーツの価値を最大化し、社会に情報提供をするプロフェッショナルのお二人から受講生につながるバトンを、これから先スポーツで日本をもっと豊かにすることのキッカケにしていかなければなりませんね。

講師/ゲスト

執筆家

江橋よしのり

執筆家。茨城県出身。スポーツノンフィクション、伝記、児童文学などを執筆。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『新なでしこゴール!!』(講談社)など。『がけっぷちからオリンピック』は横浜市立中学校の道徳教材に。その他、書籍の構成者として『エネル言』(松岡修造著/小学館)、なでしこジャパン佐々木則夫監督の著書『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(講談社)や、澤穂希選手の著書『夢をかなえる。』(徳間書店)、安藤梢選手の著書『KOZUEメソッド』(講談社)の構成を担当。執筆以外には講演活動、女子サッカー「なでしこリーグ」の解説を行い、FIFA(国際サッカー連盟)の年間最優秀女子選手投票メンバーも務める。

スポーツライター

高樹ミナ

スポーツライター。千葉県出身。アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオデジャネイロ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演会、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)編集協力他。

08年まで企業の外部人事部機能を担い、企業経営における人材開発・採用戦略の立案・導入を行う。08年よりMARS立ち上げ参画。アスリート・プロチームのマネジメント、スポーツイベントプロデュースなど、社内事業を横断的に従事し、10年より立ち上げた、「MARS CAMP」商品企画・広報も担当。新卒・中途共にスポーツ業界内企業の外部人事部として活動しながら、体育会系人材の就職支援やアスリートと企業を結ぶセカンドキャリア支援など、スポーツとキャリアをトータルでプロデュースする。